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B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)再活性化とは,肝機能正常の無症候HBVキャリアまたはB型肝炎既往感染者が,免疫抑制・化学療法を受けた場合に起こる免疫賦活により,急速にHBVが活性化して重症肝炎を引き起こし死にいたることのあるきわめて重篤な病態を呈する疾患であり,医学雑誌でもときどき特集されている1,2).原因となる薬剤は,ステロイド,免疫抑制薬,抗悪性腫瘍薬,生物学的薬剤,抗リウマチ薬,C型肝炎直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAA)など多岐にわたり,その対象疾患もさまざまである1).とくに,B型肝炎既往感染者がいったん再活性化を起こすと,劇症肝炎に進行する率や,死亡率がきわめて高く,以前から大きな問題となっている.本邦では,2009年に「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」3)が示され予防法が設定されたが,ガイドラインの遵守率は低く,その後もB型肝炎再活性化による死亡例が発生し,医療訴訟となり100%敗訴となった報道が毎年絶えない.2021年2月に,日本医療機能評価機構からも「免疫抑制・化学療法によるB型肝炎ウイルスの再活性化」の医療安全情報が出され,13例の報告とともに,周知徹底・医療機関の取り組み推進が喚起された.HBV再活性化を予見できずに劇症肝炎にて死亡にいたった場合,その責任は医師に問われることになる.したがって,医療管理者はこのような薬害被害から患者ならびに医師を守るために,HBV再活性化の未然防止対策を講じる責任がある.非肝臓専門医,肝臓専門医ともに,HBV再活性化を未然に防止できる恩恵を受けられるシステムの構築が望まれていた.そこで,われわれは,2012年に院内プロジェクトメンバーを結成し検討を重ねたうえで,詳細なHBV関連医療情報をエンコードすることにより,HBV再活性化を自動的にチェックするシステムを開発し運用してきた4).非肝臓専門医と肝臓専門医の両者は,このシステムを用いてHBV再活性化を自動的に予防することができる.また,このシステムを使用することにより院内全体のHBV再活性化の前向き調査が可能であり,当院における6年間のHBV再活性化前向き調査を行った5).
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