特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第3章:血 液
血小板減少に遭遇した際には,血栓症の存在とheparin使用に注意しよう
-HITも鑑別の候補に入れるべし
金子 誠
1
1三井記念病院臨床検査部
キーワード:
heparin起因性血小板減少症(HIT)
,
抗血小板第4因子(PF4)/heparin複合体抗体(HIT抗体)
,
自己免疫性heparin起因性血小板減少症
Keyword:
heparin起因性血小板減少症(HIT)
,
抗血小板第4因子(PF4)/heparin複合体抗体(HIT抗体)
,
自己免疫性heparin起因性血小板減少症
pp.456-459
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_456
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heparin起因性血小板減少症とは?
heparin起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)は,heparin治療による出血性副作用に並ぶ有害薬物反応である.heparinへの曝露により,一部の患者には血小板第4因子(platelet factor 4:PF4)とheparinの複合体を標的とする抗PF4/heparin複合体抗体(HIT抗体)が誘導される.この自己抗体は血小板を活性化して血栓形成促進状態をもたらし,消費性血小板減少を惹起する.さらには肺塞栓症,脳卒中などの生命を脅かす合併症となる血栓塞栓症を発症させる.具体的なHITの例としては,血栓塞栓症の予防・治療としてのheparin投与中に血栓塞栓症を発症・増悪するような場合である.心血管イベントや術後の血栓の予防目的のheparinによる抗凝固療法中に進行した血小板減少およびDダイマー高値,下肢腫脹・疼痛や急な胸痛の発症(深部静脈血栓症・肺塞栓症)を認めることなどがあれば,鑑別診断のなかには必ずHITを含めたい.その他,血液透析などの血液回路内凝固,誘因がはっきりしない血小板減少に伴う血栓症などがあればHITを疑うべきである.
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