特集 高齢者医療ハンドブック―高齢者医療におけるダイバーシティへの対応
第Ⅶ章 高齢者の慢性疾患管理法
9.慢性腎臓病
田村 功一
1
,
大城 光二
1
,
小林 竜
1
,
畝田 一司
1
,
涌井 広道
1
Kouichi TAMURA
1
,
Koji OOSHIRO
1
,
Ryu KOBAYASHI
1
,
Kazushi UNEDA
1
,
Hiromichi WAKUI
1
1横浜市立大学医学部循環器・腎臓・高血圧内科学
pp.867-873
発行日 2018年4月1日
Published Date 2018/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika121_867
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Summary
▪慢性腎臓病(CKD)患者は末期腎不全の予備軍であり,かつ心血管系疾患の合併高リスクである.近年では65歳以上の高齢者の末期腎不全患者の増加傾向がみられる.
▪高齢CKD患者の治療に関するエビデンスは限られているが,75歳以上の後期高齢者における,包括的治療管理による末期腎不全への進展,重症合併症阻止,QOLの維持・向上を図ることの意義は大きいと考えられる.
▪CKD患者に対する包括的な管理は,新規透析導入の抑制のみならず,患者の生命予後や生活の質の改善にも寄与できると考えられる.
▪健常な高齢者においても加齢に伴い腎機能は徐々に低下していくが,最近高齢者において増加傾向のCKDステージG3以降になると,腎予備能の低下に対する残存ネフロンの代償機能が保てなくなり,高血圧,体液過剰,電解質異常がみられるようになる.
▪さらに腎性貧血,慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD),代謝性アシドーシスが出現してくる.
▪こうした症候に一つ一つ対処することで,症候の改善だけでなく腎機能低下の抑制効果,心血管疾患の発症予防も期待される.
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