胸部外科医の散歩道
メスを置いた外科医の想い
渡邉 善則
1
1東邦大学
pp.312
発行日 2023年4月1日
Published Date 2023/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu76_312
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- 文献概要
1982年に東邦大学医学部を卒業し,当初は肝臓外科医を目指して医学部付属大森病院第一外科に入局しました.外科研修医にとって第一の目標は,4年間の臨床研修プログラムを修了し外科認定医試験に合格することでした.当時の外科認定医試験は,規定症例数の症例記録と学術業績(学会発表,論文)による書類審査と,面接官2名による口頭試験で合否が判断されました.症例記録の作成が一番大変で,術者と助手経験症例について術式および診療サマリーを記載するもので,全て手書きでした.無我夢中で臨床に没頭していたため記載が疎かになったと言い訳をしつつ,1,000冊余にも及ぶカルテを診療録管理センターで借り出して,疲労困憊の体に鞭を打ちつつ,締め切り直前まで記載していた苦い記憶があります.今日ではNational Clinical Database(NCD)や電子カルテを使い,あっという間に処理できてしまうはずです.アナログ時代に膨大な時間を無駄に費やしたように思えますが,自身の経験を手書きで振り返れたことは,外科研修期間を只通り過ぎただけではなく,しっかりと見直すことができ,改めて,経験が足りない技術を認識する機会であったと思えます.
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