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症例提示
患者プロフィール
Tさん,70代,女性.
直腸がんで術後アジュバント薬物療法の目的で消化器外科より腫瘍内科に紹介受診された.夫婦二人暮らしで,近隣に息子家族が暮らしており,折に触れ交流をしていた.これまでの既往歴との関係で,病院受診は慣れており,一人で来院され,受診時には毎回きれいに身なりを整え,化粧をして受診していた.PS(performance status)は0-1,友人との食事会や外出の話をすることが多く,比較的,社会とのつながりをもった活動的な方であった.
経過(高齢者機能評価を受けるまでのTさんの状況)
Tさんは,既往歴として60代前半で罹患した子宮頸がんⅢB期があり,その際化学放射線療法[TC(パクリタキセル+カルボプラチン)療法+放射線治療]の経験があった.また,ご自身の基本的な体力に自信をもっていた.しかし70代という年齢を考慮し,もろもろのがん薬物療法導入前の検査や治療内容の説明後,直腸がんステージⅢとしてアジュバント治療[CAPOX(カペシタビン+オキサリプラチン)療法]を,カペシタビンのみ1段階減量1,200 mg/回(体表面積:1.4 m2)で開始されることとなった.eGFRは,65.2 mL/分で腎機能低下はなかった.投与時には,オキサリプラチンによる中等度の催吐性リスクを考慮して,ステロイド注射薬やNK1受容体拮抗薬(フェニルモルホリン誘導体),制吐薬の処方など,悪心・嘔吐に対する支持療法を併用して投与が行われた.有害事象としては,投与後3日目のみgrade 1程度の悪心が出現し,寒冷刺激によるgrade 1~2の末梢神経障害は2週間を通じて生じていたが,日常生活はある程度通常どおり行えていた.その後,2クール目投与日の前日に,grade 2程度の倦怠感,食欲不振,悪心などが強く生じ,予約外受診した.その際の血液検査やTさんの臨床症状により,軽度脱水と診断され,点滴投与を受け帰宅した.
2クール目投与日の外来当日は(予約外受診日の翌日),通常どおり,がん看護外来で診察前問診(図1)を行った.前日受診時に生じていた倦怠感や食欲不振,胃部不快感は軽減傾向ではあるものの持続していた.1クール目の有害事象の経過から,2クール目からはオキサリプラチンの投与量も一段階減量され,カペシタビンは2段階減量(600 mg/回)とされた.2クール目投与後1週間後の外来では,倦怠感や食欲不振,胃部不快感が有害事象共通用語規準CTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events version 5.0) grade 3に悪化し,何よりもいつもきれいな姿で受診するTさんが化粧も整髪もせずに受診し,「もうこんなにつらい治療は嫌だわ.大好きなビールが飲めないもの.食事が多少摂れないことはあっても,ビールだけは飲めた.そのビールも欲しくない状態なんて,これは本当に重症よ」と語り,CAPOX療法により明らかなQOLの低下を認めた.
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