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近年,抗がん薬治療が劇的に進化していることは言うまでもない.診断されたがんに対して,適応のある抗がん薬をやみくもに投与するのではなく,患者一人ひとりのがんのタイプにより,治療薬を変える個別化医療(プレシジョン医療)が日常臨床でも実施されるようになっている.以前の抗がん薬の【効能・効果】はがん種のみの記載であったが,最近の新薬には,△△変異陽性や□□過剰発現など,がん種だけではなく,がんのタイプまでもが記載されている.これは,さらなる効果が期待できるがん個別化医療が実臨床に組み入れられていることを示す.一方,臨床でがん治療に携わるわれわれにとってはがん薬物療法がより専門的,複雑になっていると言えよう.
令和5年3月28日,第4期がん対策推進基本計画(以下,第4期基本計画)が閣議決定された.第4期基本計画の全体目標は「誰一人取り残さないがん対策を推進し,全ての国民とがんの克服を目指す」である.この目標を達成するには,各職種がおのおのに行動するだけでは達成することがむずかしく,各職種がそれぞれの専門性を活かしチーム医療を実践することが必要不可欠である.しかし,拠点病院等が提出する診療体制や診療実績の報告書によると,すべての拠点病院等において専門チームが設置されている一方で,拠点病院等以外の医療機関においては,専門チームの設置が進んでいない,と報告されている.2人に1人ががんに罹患する昨今,拠点病院等以外でも新規薬剤を用いたがん治療は行われる.そのような現状を鑑みた場合,患者のそばにいる看護師も新薬に関する情報を整理し,薬剤ごと患者ごとの個別的な対応が必要となる.
本特集は,近年発売された13の新規薬剤(がん治療薬を11薬剤,支持療法薬を2薬剤)について,薬剤ごとに薬剤師による薬剤情報の提供と看護師による看護のポイントの解説を組み合わせたハイブリットな構成となっている.実際に診療にあたる看護師がより現場ニーズに応えることができるために,「アセスメントのポイント」や「患者の生活上の注意点」,「専門家につなぐ局面」も解説している.
がん看護の臨床現場で活躍される看護師の皆さまが本特集を参考にすることで,より安心・安全ながん薬物療法を提供することにつながり,さらには患者のQOL (quality of life)向上の一助となれれば幸いである.
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