特集 がんチーム医療の壁を乗り越える! ~チーム医療の実践に必要なスキルセット~
【がんチーム医療に必要なスキルセットを学ぶ】
コンフリクトマネジメント
入江 佳子
1
Yoshiko IRIE
1
1虎の門病院看護部/がん看護専門看護師
pp.403-408
発行日 2024年7月1日
Published Date 2024/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango29_403
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コンフリクトとは
高度な医療の発展により,患者家族のニーズだけでなく医療者自身の価値観も多様化しており,双方の認識のずれが生じることも多い.また,医療の現場では,多くの意思決定を迅速に行うことが求められ,とくにがん医療においては不確かな未来に関する意思決定をしなければならない場面が多数ある.そのような場面で,意見や認知の相違により発生する衝突を「コンフリクト」という.
“conflict”とは,英語で「対立」や「争い」を意味する単語である.一般的には,意見や利害が衝突し,一致しない状態を指す.具体的には,国家間の戦争や,ビジネスにおける競争,あるいは人間関係における意見の相違など,幅広い状況で使用される1).
職場におけるコンフリクトには,仕事上の意見やアイデアがぶつかることを示す「タスクコンフリクト」と,仕事とは関係のない人間関係から生じる感情の対立を示す「リレーションコンフリクト」に区別することができる.タスクコンフリクトは,前向きなコンフリクトであり,組織に新たな価値を見出すことができる.一方,リレーションコンフリクトは,パーソナルな部分に関する感情的な対立のため,解決が困難になることも少なくない.
コンフリクトがもたらす結果の調査2)では,タスクコンフリクトの経験が増えると,リレーションコンフリクトの経験も増加するが,心理的安全性が高い場合には,リレーションコンフリクトはタスクコンフリクトほどには増加しない.また,コンフリクトを回避する職場では,タスクコンフリクトの機会は減少するが,リレーションコンフリクトが増加し,ワークエンゲージメントが低下する,と述べられている.
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