特集 がん医療における「家族ケアの課題」 ~困難事例への解決アプローチ~
実践! がんとACP(意思決定支援)
標準治療が終わるとき,患者と家族の意思を調整し統一させる
冨永 知恵子
1
,
中野 妃佐惠
2
,
石川 満知子
3
Chieko TOMINAGA
1
,
Hisae NAKANO
2
,
Machiko ISHIKAWA
3
1福井赤十字病院看護部/がん看護専門看護師,がん化学療法看護認定看護師
2福井県立病院看護部/がん看護専門看護師,乳がん看護認定看護師
3長野県看護大学大学院博士前期課程
pp.171-175
発行日 2024年3月1日
Published Date 2024/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango29_171
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はじめに
近年,がん薬物療法は急速な進化を遂げ,その目的は根治から症状緩和まで幅広く,そして進行期・再発時においては長期間で治療は連続的なものとなっている.そのような中で,医療者から治療効果よりも不利益が上回ると判断されたとき,患者は治療の一時中断や中止,これに並行して療養場所の選定などのさまざまな意思決定が必要となる.
門脇は,がん患者とのend-of-life discussions (EOLD)を「がんが進行した状態にある患者に対して,患者の価値観や個別性を尊重しながら,患者と家族と医療者のチームアプローチと個々の信頼関係に基づいて,治療・緩和ケア・療養について話し合うこと」1)と定義している.EOLDを積極的に行うことは,患者の意向に沿ったEOLケアの増加やQOLの向上につながる.
本稿では,標準治療⁎での治療効果が望めない時期に差し掛かった患者・家族と医療者が,EOLDにより意思決定をした事例について紹介する.
⁎本稿での標準治療とは,一般的に臨床で広く行われているがん薬物療法という広義の意味で用いる.ガイドラインで推奨される薬物療法に基づきながら,患者の状態に応じて使用できる抗がん薬を選択して行う治療を指す
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