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がん関連倦怠感に対する看護支援の概説
がんに関連した倦怠感は約65%のがん患者が経験し,患者にとって苦痛が強い症状の一つである1-3).がん関連倦怠感とは,がんまたはがん治療に関連した,身体的,感情的,および/または認知的な倦怠感または消耗の,苦痛で持続的な主観的感覚と定義される3).
European Society for Medical Oncology (ESMO)のガイドラインでは,①スクリーニング,②診断的アセスメント,③マネジメントの3段階のモデル(図1)を示している2).がん関連倦怠感は,医療者が過少評価しやすい症状の一つであり,症状スクリーニングにおいて苦痛を見過ごさないことも看護師の大切な役割の一つである.診断的アセスメントでは原因となる要因をアセスメントし,対処可能な要素(たとえば,貧血や抑うつなど)の改善を図る.症状マネジメントでは,❶身体活動(悪液質のある方は除く),❷患者や家族への教育,❸心理社会的介入,❹薬物療法が勧められている2).
悪液質がない場合,定期的な運動または身体活動は,倦怠感のケアとして推奨される2).有酸素運動(ウォーキング,水泳,軽いジョギングなど),軽い筋力トレーニング,緩やかなストレッチなどの活動を行うことで,筋力や身体機能が改善し,疲労が軽減することが知られている.個人の能力や治療状況に応じて適切な活動レベルを決定するために,医療専門家または運動専門家に相談することが重要である.一方で,悪液質がある場合は,身体活動や運動のQOL向上の効果が示唆されているが,エビデンスとして確立はしておらず今後さらなる研究が必要である2).
患者や家族への教育では,患者や家族の倦怠感への理解を助け,セルフケア行動やストレスマネジメント行動を促すことを目的に,倦怠感の特徴,リラクセーション方法,エネルギーの節約方法,ストレスマネジメントに関する情報提供が行われる2).
エネルギーの節約方法に関する情報提供の例と心理社会的介入の例を以下に示す.
【エネルギーの節約方法に関する情報提供の例】2)
・必要な活動のためにエネルギーを節約し,活動と休息時間のバランスをとる ―自身の体力を管理し,活動の優先順位をつけることを伝える ―自分のペースを守り,休憩を取り,周りの人に依頼できることは依頼する など ・適切な睡眠管理や栄養サポートについても情報提供を行う ・ストレス対処法について情報提供を行う ―深呼吸 ―瞑想 ―ヨガ ―そのほかのリラクセーション法 など
【心理社会的介入の例】2)
・認知行動療法は,全体的な生活の質を改善するのに役立つ ―倦怠感の原因となる否定的な考えや行動を特定し,修正することに焦点を当てる ―個別性に応じた対処戦略を開発し,ストレスを管理する
治療期に関してのエビデンスが示されている一方で,終末期がん患者の倦怠感に対する看護支援のエビデンスは,研究の対象者が少なく,結果に一貫性もないため,エビデンスとして確立した看護支援はない4)が,例えば,音楽療法や絵画療法,仮想現実(virtual reality:VR)を用いた介入,認知療法などの報告がある4).
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