特集 リサーチエビデンスを看護ケアに活かす ~今とこれから~
せん妄
菅野 雄介
1
Yusuke KANNO
1
1東京医科歯科大学保健衛生学研究科
pp.713-718
発行日 2023年11月1日
Published Date 2023/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango28_713
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せん妄に対する看護支援の概説
せん妄とは,「急激に発症し,全般的な認知機能の障害,意識レベルの変化,注意力の低下,精神運動性の興奮あるいは低下,睡眠覚醒サイクルの乱れを特徴とする一過性の器質性障害」と定義1)される症状である.せん妄に対する支援は,予防と治療に大別され,さらに薬物療法と非薬物療法に細分化される.近年,せん妄の発症予防の非薬物療法による介入効果が報告2)されており,せん妄の治療戦略(図1)3)として重要な位置づけとなっている.
国内外のがんのせん妄に関するガイドラインにおいてもせん妄の発症予防を目的とした非薬物療法が重要視されている4,5).国内のガイドラインの推奨文では,「がん患者のせん妄の発症を予防するための非薬物療法として,術後せん妄やがん治療期にあるせん妄に対し,医療者や患者と家族へのせん妄に関する教育,多職種連携や専門家によるチームアプローチ,疼痛や脱水,便秘などの症状マネジメント,環境調整(日時の認識,音楽),せん妄誘発薬剤などのリスクの除去と薬剤の変更や調整などを含む複合的な介入,光線療法が挙げられる」と記載されている6).なかでも複合的な介入は,看護師が主導的に行う介入研究が多数報告されており7),せん妄の発症予防において看護師の役割は大きい.
そこで,本稿では,せん妄の発症を予防するための非薬物療法において,治療期または終末期にあるがん患者への看護支援について説明する.
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