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呼吸困難に対する看護支援の概説
呼吸困難とは,「呼吸時に感じる不快な主観的な体験」と定義される症状であり1),がん患者の半数以上が体験すると報告されている.がん患者の呼吸困難に対する支援は,薬物療法中心の対応となることが多いかもしれない.しかし,最近になり,呼吸困難に対する支援のあり方が変わりつつある.2020年には欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology:ESMO)2)が,2021年には米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)3)が,がん患者の呼吸困難に対する診療ガイドラインを報告した.これらのガイドラインのなかでは,非薬物療法を呼吸困難に対する第一選択の治療オプションとして検討してよい,と位置づけている.その理由として,エビデンスが集積されつつあること,薬物療法のような有害事象が少ないこと,低コストで実施可能な支援が多いことを挙げている.また,国内でも日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会が編集した『進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン2023年版』が出版された.本ガイドラインにおける呼吸困難に対する支援のアルゴリズムでも,非薬物療法の実施は優先的に検討してもよいと位置づけられている4).
ESMOとASCOの診療ガイドラインで推奨されている非薬物療法の一覧を表1にまとめた.ESMOの診療ガイドラインでは,酸素療法が薬物療法の一つとして扱われている.なお,酸素療法については,低酸素血症がない場合には実施を推奨していない(ASCOの診療ガイドラインも同様).そのほか,施設内のリソースに応じて,専門家への紹介や複合支援の実施を推奨している.ASCOの診療ガイドラインでは,表1に挙げた支援のうち,送風療法と酸素療法については,患者の予後が日単位の状況であっても実施可能であると紹介されている.
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