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悪心・嘔吐に対する看護支援の概説
悪心・嘔吐とは,消化管の内容物を口から吐出したいという切迫した不快な感覚,及び消化管の内容物が口から強制的に排出されること,と定義1)される症状であり,がん患者に一般的によくみられる症状である.悪心・嘔吐の原因には,抗がん薬やオピオイドなどの薬物治療によるもの,消化管運動の異常・低下・亢進によるもの,中枢神経・心理的な原因によるものなど多岐にわたる.がん患者の悪心・嘔吐に対する支援は,原因に応じた治療が主体となる.とくに制吐薬を中心とした薬物療法が第一選択として適応される.ゆえに,悪心・嘔吐に関連するガイドラインでは,制吐薬に着目した内容で構成されたガイドラインが,国際がんサポーティブケア学会/欧州臨床腫瘍学会合同(Multinational Association of Supportive Care in Cancer:MASCC/European Society for Medical Oncology:ESMO),米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO),全米総合がん情報ネットワーク(National Comprehensive Cancer Network:NCCN)で報告されている2-4).
制吐薬を中心とした薬物療法による支援と並行して,非薬物療法を支援に取り入れることは患者の苦痛を緩和するためにも重要であると考える.米国がん看護学会(Oncology Nursing Society:ONS)5)では,化学療法由来の悪心・嘔吐(chemotherapy-induced nausea and vomiting:CINV)に関連した推奨の一部として非薬物療法が挙げられ,NCCN6)では,「Guidelines for Patients」という患者のためのリーフレットのなかで,悪心・嘔吐に対する非薬物療法による支援が紹介されている.ほかにも,『Oxford Textbook』7)において,非薬物療法による支援が紹介されている(表1).
また,国内では日本緩和医療学会(Japanese Society for Palliative Medicine:JSPM)が編集している『がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン』1)が2017年に出版されており,非薬物療法について紹介している.加えて,現在,日本癌治療学会(Japanese Society of Clinical Oncology:JSCO)が編集している制吐薬適正使用に関するガイドラインは2023年内に改訂版が発行予定(2023年9月13日時点)であるが,内容に非薬物療法に関する支援が含まれる予定である.
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