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がん患者は,がん治療やがんに伴うさまざまな症状を経験することで,最良のQOL (quality of life)の達成が妨げられることは少なくありません.患者を支える家族もまた,患者の意思決定を支えるなかで,心の揺らぎや精神的な負担を経験されているかもしれません.患者・家族のケアニーズをとらえ,必要とされているケアを届けることは,看護師にとって重要な役割の一つです.
2000年頃からエビデンスに基づく実践(evidence based practice:EBP)に関心が高まり,ケア提供の重要な要素と位置づけられるようになりました.EBPとは,利用可能な最良のリサーチエビデンス(研究結果)と,患者・家族の趣向,ケアを提供する環境やケア提供者の実践知を統合し,提供されるものだといわれています.私は,EBPの要素である「最良のリサーチエビデンス」のシーズ(種)は,皆さまが日々,臨床で提供されている一つずつのケアだと考えています.すでにリサーチエビデンスが集積されている分野や,これからリサーチエビデンスが集積される分野もあるかと思います.しかし,臨床の看護師がその情報をキャッチし続けることは,なかなかにたいへんなことです.
そこで,本特集では,臨床の最前線で患者・家族のケアを提供されている看護師の皆さまを対象に,看護ケアに焦点をあてた,がん治療期におけるリサーチエビデンスと,終末期がんにおけるリサーチエビデンスについて,症状別に解説していきます.
本特集の執筆陣は,個々のトピックを研究テーマにしている看護研究者にお集まりいただきました.紹介するリサーチエビデンスのなかには,すでに臨床で実践されているものもあるかと思いますが,その場合には,リサーチエビデンスの確認につながるよう,執筆をお願いしました.また,臨床で馴染みのないような最新のリサーチエビデンスを紹介する際には,今後,臨床で実践される可能性があるケアとして,その適応方法について解説をお願いしました.
本特集が,看護師の皆さまの看護ケア提供の引き出しが増えることや,自信をもって良質なケア提供することにつながり,ひいては患者・家族の最良に少しでも近づくことになりましたら幸いです.
編集者を代表して 角甲 純
© Nankodo Co., Ltd., 2023