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若手看護師が苦慮する症状マネジメント
本特集は,がん患者の看護に携わる2~3年目の若手看護師を対象に,臨床現場で対応に苦慮する症状に直面したときに,対応のコツについての確認や振返りをしていただくことを目的として編集した.今日,がん治療は急速な進化を遂げ,ゲノム医療の時代を迎え,治療の方法,種類,数が急速に増えている.また,がんの種類や進行度によって手術(外科)治療,薬物療法,放射線療法など単独の治療法で十分な効果が得られない場合は,より高い治療効果を目指して,これらの治療法を組み合わせて治療する集学的治療が行われる.がん看護に携わる看護師は,単独治療に求められる臨床判断,ケアに加え,集学的治療を受ける患者については,それぞれの治療によって受けた身体的ダメージなどを十分にアセスメントしたうえで,看護にあたることが求められる.そしてさらには,がんに伴う身体的,精神的,社会的苦痛を和らげ,患者が自分らしく過ごせるような緩和ケアのスキルが求められる.がん看護に携わる若手看護師は,これらの経験症例が少ないことから,「私の看護はこれでいいの?」などの不安が生じることが少なくない.不安を伴うストレスが長期化した場合,患者を受けもつことへのおそれや怖さから臨床現場から離れることを選択する場合もある.
そこで,本特集の編集にあたっては,若手看護師を対象に「手術(外科)治療」「薬物療法」「放射線療法」の3つの治療別,「がんそのもの」「臨死期,終末期」の5つについて対応に苦慮する症状を調査した.例を挙げると「薬物療法を受ける患者の症状マネジメントにおいて苦慮している症状を挙げなさい」などと問いかけた.回答の中には,直接自らが経験したことはないが(先輩看護師が対応した症例),困難と感じている症状もあった.症状によっては,がんという疾患の特性上,必ずしも明確に区別できないものもあった.
本特集では,「終末期せん妄」,「コントロール不良な疼痛」,「抗がん薬による急性反応」,「放射線による口腔粘膜障害」,「嚥下障害による誤嚥性肺炎」に「発熱,腹痛」の7つの症状マネジメントを解説している.これらは,がん治療を受ける患者にみられる症状の一部であるが,マネジメントの要点がまとめられていることから,本特集を手に取っていただき,ケアのポイント,コツをつかみ,日常のケアに役立てていただけることを期待したい.
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