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本邦の高齢化は世界でもまれにみるスピードで進行している.認知症の患者数は2012年に約462万人となり,2025年に約675万人,2050年には1千万人を上回ると推定されている.国も早期診断・早期介入の必要性を強く認識し,医療・介護・福祉の連携システムが構築されてきた.また,「認知症の人」=「支えられる側」と考えるのではなく,認知症の患者や家族が認知症とともによりよく生きていくことができる社会の実現を目指すという方向性が示された.2012年には厚生労働省の施策として「認知症施策推進5ヵ年計画(オレンジプラン)」が策定され,早期診断・早期対応に向けた取り組みが進み,各種人材の養成や認知症疾患医療センターの整備が進められた.次いで,「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が策定され,認知症初期集中支援チームがすべての市町村で設置されることになった.2019年には,「認知症施策推進大綱」が取りまとめられ,「認知症はだれもがなりうるもの」と明記されるとともに,共生と予防が対策の両輪とされ,五つの柱が示された(図1)1,2).「共生」とは,認知症の人が,尊厳と希望をもって認知症とともに生きる,また,認知症があってもなくても同じ社会でともに生きるという意味である2).一方,「予防」とは,認知症になるのを遅らせる,認知症になっても進行を緩やかにするという意味である2).予防については,運動不足の改善,糖尿病や高血圧症などの生活習慣病の予防,社会参加による社会的孤立の解消や役割の保持などが,認知症の発症を遅らせる可能性が示唆されていることを踏まえ,予防に関するエビデンスの収集・普及とともに,通いの場における活動の推進など,正しい知識と理解に基づいた予防を含めた認知症への「備え」としての取り組みに重点を置く2)とされたが,具体的な数値目標は撤回されている.
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