特別寄稿
緩和ケアWebセミナー「出島塾」の取組み
菅 多恵子
1
Taeko SUGA
1
1社会医療法人春回会 出島病院看護部/認定看護管理者
pp.707-710
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango27_707
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はじめに
2007年4月に施行された「がん対策基本法」では,痛みなどのつらい症状の緩和を目的とした治療を,早期からがんの治療と並行して行うことが推進され,2012年からはとくに,診断時から適切な緩和ケアを行うことが推奨されている.しかし,2015年の全国患者体験調査では,からだのつらさがあると答えた患者の割合は34.5%,気持ちのつらさがあると答えた患者は28.3%であり,患者の苦痛に対して迅速かつ適切なケアが十分提供されていない現状と,緩和ケア研修会の受講勧奨,受講の利便性の改善,内容の充実が求められた.2030年には,看取り難民が増加し約47万人に達すると予測され,緩和ケアが必要ながん患者も多く含まれる.地域包括ケアシステムが重要となった現代において,病院完結ではなく地域に根差した緩和ケア研修のあり方を模索した.
当院は37床を有する独立型緩和ケア病院である.院内スタッフの緩和ケアの質向上および,地域の医療介護従事者(以下,地域スタッフ)への緩和ケアの普及の目的で,緩和ケア研修「出島塾」を2017年から開始した.しかし,開始当初は業務調整がむずかしく,院内スタッフの平均受講率は約30%,地域スタッフは毎回2~3人の出席であった.さらに,2020年1月からの新型コロナウイルス感染症の猛威により,研修はいったん中断せざるを得なかった.その後,withコロナでの日常をどう模索し継続していくかを検討し,オンライン緩和ケア研修を構築するにいたった.コロナ禍での困難を機会にできた,2021年度緩和ケア研修「出島塾」について報告する.
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