研究の想い出
人体癌病理との取組み
今井 環
1,2
1九州大学
2福岡大学病理学
pp.258-263
発行日 1973年10月15日
Published Date 1973/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902968
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私の想い出は,何といつても,3年前に停年退官するまでの,九大時代の研究生活39年間の中にある。助教授時代までの13年半は私1人の独力だつたが,教授になつてからは,病理学教室と癌研究所の多くの同門の人に助けられて,いくばくかの業績をあげることができたと思つている。苦境の中を忍耐と寛容の精神で,夜遅くまで頑張つてくれた同門者の姿がありありと頭に浮かび,これが私の想い出のすべてといわねばならない。それらの人びとの名前をあげないで私の想い出は述べられないわけだが,紙数の関係でそれができない。それかといつて一部の人の名だけを借りるのは他の人に申訳ないので,全部省略し,「私ども」という表現で替えさせてもらうことにしたい。以下述べるのが,私だけがやつた仕事ではないことを,まずもつて理解ねがいたい。
私はご多聞にもれず,いろいろなことに手をつけたが,いちばん多くの時間を費したのは癌病理の研究であり,ついで脾臓血管系の研究,動脈硬化の研究,その他であつた。しかし与えられたページ数の関係で,今回は癌の研究の回顧に限らねばならないと思う。
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