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自己紹介
看護学校を卒業した私は,念願だった生まれた病院の一般消化器外科病棟で勤務しました.当時は,がんの告知が行われることは少なく,手術前には家族と医師がまず患者にどのように告知を行うかを相談していました.胃がんであれば「胃潰瘍」,肝臓がんであれば「肝血管腫」と.そのような中,ご家族内で告知のしかたに齟齬が生じ,手術し,退院しても奥様とともに苦しんだ受けもち患者さんがいらっしゃいました.その時,私にはケアを行うにも十分な知識も経験もなく,奥様と患者さんへのケアに大きな後悔がありました.また,自分と同じようなケアへの悩みをもった後輩がいたときに,少しでもサポートしたいと思い,働きながら大学の心理学科に進学しました.さらに手術を受けるがん患者さんとその家族へのケアについて学びたいと考え,大学院修士課程に進みました.大学院修了後は元の病院の外科個室病棟に復職し,がん看護専門看護師の資格を取得しました.
当時,私が勤めていた病院では認定看護師が活躍していましたが,がん看護専門看護師はいませんでした.そこで,まずは病棟内での問題に焦点を当て,同僚や管理者とともに解決できるように対応しました.徐々に会議への参加,院内研修を担当したりと院内全体に活動の場を広げようとしていました.
2008年に現職の学科長から看護部長に「認定看護師教育課程を立ち上げるため,専門看護師に来てもらいたい」と依頼がありました.当時の教育機関では,専門看護師が教育職を行うのは少数であり,病院での実践を可能な限り続けていきたいと考えていた私は,たいへん悩みました.看護部長や副看護部長をはじめとした管理職,家族,友人にも相談しました.最終的には病棟でも新人指導を担当し,現任教育に関心があったため,異動することを決心しました.
本格的に教育を行うことは初めてであり,さらに認定看護師教育課程を立ち上げる,軌道に乗せていくことはとても重責でした.手さぐり状態ではありましたが,同僚の先生方と協力しながら,修了生ががん化学療法看護認定看護師として,目の前の患者さんに対して研修前よりも根拠のあるケアを行うことができるようになってもらいたいという願いのもと,最新の知識と技術を提供しました.
日本看護協会による2020年からの新たな認定看護師教育が開始になるという流れを受け,本学の認定看護師教育課程は閉講しましたが,日本全国で300余名の研修生が現在も活躍しているのは,私にとってとても大きな誇りです.
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