連載 善先生のがんなにそれ講座 ~まずは相手を知らなあかんで~ 【2】
なにそれ4~6
廣瀬 善信
1
Yoshinobu HIROSE
1
1大阪医科薬科大学医学部病理学教室
pp.399-403
発行日 2022年5月1日
Published Date 2022/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango27_399
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なにそれ4 頼りにしてます 異型さまさまやねん!
若かりし頃,同級生の外科医から苦情があった.曰く,「『異型細胞やけど,がんやない』と病理報告書に書いてあるけど,何書いてんねん!? 異型はがんがもつもんやし,『がん細胞やけど,がんやない』って言われたみたいで,ワケわからんわ!」と.
なにそれ5 良し悪しも分化次第や!
いきなり話が逸れるが,生物学の分野では,分化はもう少し広い意味で使われる.すなわち広義の分化とは,単純なものが多様化するさまを表す.たとえば未熟な細胞が特定の機能を発揮するようになることを分化といい,わかりやすく言えば「一人前の細胞に育つこと」である.分化とは最近注目が集まる再生医療でのキーワードでもあり,こちらの広義のほうがよく使われるようになった気がする.
なにそれ6 応援してるで 異形成!
異形成の生まれ育ちは正統というか由緒正しい.形成の前にいろんな接頭語をつける用語は,たとえば過形成,低形成,無形成など多くのものが昔から存在する.その中において異形成は,もっともポピュラーなものとして位置づけられるかもしれない.そもそも異形成とは,通常の形成とは異なる,すなわち形が少しおかしいというような,広い意味で使われてきた.したがって,たとえば先天性の骨格異常である軟骨異形成症などに使われたりするのも,語義からすればあたり前といえる.それを,がんの領域にもってきて,がんの手前という意味で使われ始めて以来,異形成の利用はがん医療の発展とともに広がっていった感がある.
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