連載 とらうべ
家族ってなに?
石井 美雄
pp.445
発行日 1995年6月25日
Published Date 1995/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901255
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突然,解任されるまで「中途採用の父親」を10年やった。26歳の時,恋をした相手に8歳の男の子がいた。考えた。エミールからマカレンコまで手当りしだいに教育書を読み漁った。得た結論は,「さびしくないように,ひもじくないように」する,それだけだ。
結婚した相手が,料理嫌いだったこともあって大半は私が台所に立つようになった。後半はほとんど私が家事を受け持つようになっていた。やがて,我家なりになんとか回っていくようになった,と思っていた頃に私一人では太刀打ちできない困難にぶち当った。「学校」と「教育」である。息子が少しずつ学校と折り合いが悪くなっていったのだ。「教育」をめぐって妻と,後に妻の両親とも齟齬をきたすようになった。息子が不適応ながらも中学を卒業。高校進学を選ぶ時,妻と彼女の両親は「せめて,高校ぐらいは」と言った。私は職業高校を落第して4年かかって温情で卒業させてもらっていた経験から,「自分の生きる道,やりたいこと」を見つけるのが先だ,学校なんか行かなくていいと主張した。
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