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どんな薬?
オシメルチニブメシル酸塩(以下オシメルチニブ)は,第3世代のEGFR-TKI(epidermal growth factor receptor-tyrosin kinase inhibitor)です(表1).2002年に日本で最初に承認された第1世代のゲフィチニブは,顕著に腫瘍縮小効果が認められるとの報道もあり,多くの肺がん患者が服用を希望しました.その当時はすべての非小細胞肺がんに適応でしたが,画期的な治療効果を示す患者がいる一方で,急性肺障害や間質性肺炎などの重篤な副作用による死亡例の報告などがあり,この頃からEGFR遺伝子変異の存在が注目されるようになりました.EGFR遺伝子変異の頻度は海外では5~15%なのに対して日本人では30~50%と多く,とくに非喫煙者の女性,アジア人に多いことなどがわかってきました.そのため効果の高い患者に限定して治療ができるようにコンパニオン診断としてEGFR遺伝子変異の検査を行うようになりました.その後,EGFRに加えてHER2など複数のシグナル伝達阻害作用を有する第2世代のアファチニブとダコミチニブが開発されました.
第1・第2世代のEGFR-TKIは,腫瘍縮小率や無増悪生存期間の延長といった効果を示す一方で,一定期間(約1年)使用した後に病勢が悪化あるいは進行するという報告があり,EGFR-TKIの耐性化が注目されるようになりました.EGFR-TKIの耐性機構の1つとしてEGFR遺伝子変異があり,活性型変異と耐性変異の2つがみつかっています.活性型遺伝子変異にはエクソン19欠失変異とエクソン21点突然変異L858Rがあり,耐性遺伝子変異は第1・第2世代使用後に生じるエクソン20の点突然変異T790Mがあります.T790M変異はEGFR-TKIによる治療効果が乏しくなった患者の約50~60%に発現します.オシメルチニブは,このT790M変異に対して効果を示す薬として承認されましたが,活性型変異L858Rにも高い効果を示すことがわかっています.一方,EGFR遺伝子変異のない野生型EGFRチロシンキナーゼに対する阻害作用は弱いです.T790M変異がある場合は1次治療としても使用することができますが,最近ではオシメルチニブでも耐性が出現することがわかってきています.
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