特集 直腸がんの手術をめぐる看護 ~「食べる・排泄する・動く」をサポートする~
特集にあたって
松原 康美
1
Yasumi MATSUBARA
1
1北里大学看護学部,北里大学病院/がん看護専門看護師/皮膚・排泄ケア認定看護師
pp.571-571
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_571
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2020年のがん統計予測によると,大腸がんの罹患者数は年間15万人を超えるといわれ,高齢化と食生活の欧米化により年々増加傾向にあり,部位別がん罹患数ではもっとも多いがん種である.大腸がんの約7割は直腸とS状結腸に発生するといわれ,発生部位により症状や治療法が異なる.
近年,直腸がんの手術療法は飛躍的に進歩し,より肛門に近い直腸がんでも肛門を温存することができるようになってきた.一方で術後に頻便や残便感,便失禁などが長期化し困っている患者は多い.また,術前化学放射線療法,術後補助化学療法においても排便習慣の変化から,食事や仕事への不安を抱く患者もいる.
そこで今回の企画では,直腸がんの周術期における生活の中で「食べる」「排泄する」「動く」に着目し,患者の困りごとやよくある質問をとりあげた.具体的には,直腸がんの概要と主な術式,がん薬物療法や放射線療法を受ける患者への支援,低位前方切除後症候群(Low anterior resection syndrome:LARS)の概要とセルフケア支援,回腸ストーマ造設後の生活上の注意点,術後の食生活・仕事・運動での注意点,術後補助化学療法を受ける患者へのセルフケア支援などの内容を盛り込んだ.
今回は,病棟・外来・在宅で看護師が,生活上の相談,情報提供,患者教育にかかわる際の参考となるよう,基本的な知識から,より具体的で専門的な内容も含めた.看護師が直腸がん周術期の患者の心身の状態を把握したうえで,生活をともに考えて相談にのれるような看護の充実を目指し,編集した.
本特集ががん看護の現場で活躍される皆様のケア向上に役立つものとなれば幸いです.
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