特集 がん患者のフィジカルアセスメント ~部位別に見逃したくない問題を理解する~
Ⅲ.事例でみるがん患者のアセスメント
術後イレウスが出現したリンパ浮腫リスクのある膀胱がん患者
笹本 麻実
1
,
阪口 智子
1
1がん研究会有明病院看護部
pp.444-448
発行日 2021年6月15日
Published Date 2021/6/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_444
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事例紹介
プロフィール
Bさん,68歳,男性,膀胱がん,既往歴なし.
経過
左腰に立ち上がれないほどの強い痛みと高熱が出現し,救急車で近医に搬送され緊急入院となった.入院後検査の結果,水腎症の発症と,その原因として進行した膀胱がんが判明した.腎瘻カテーテルを留置し全身状態の改善を図り,1週間後,腹腔鏡下膀胱全摘,骨盤内リンパ節郭清,回腸導管造設術を行った.術後創痛や悪心のため離床があまり進まなかった.術後3日目,イレウスを発症しイレウス管を留置した.徐々に症状は改善し,術後8日目にイレウス管を抜去し経口摂取を開始した.術後14日後に尿管ステントを抜去し,ストーマの管理手技を習得後の術後28日目に退院となった.
身体所見と検査値
Bさんは半年前から血尿を自覚していた.入院時,水腎症から腎障害(BUN:45.0 mg/dL,CRE:4.23 mg/dL)も認められた.腎瘻カテーテルの留置後は3,000 mL/日程度の尿が排泄され,カテーテルトラブルの発生はなかった.1週間後,BUN:16.2 mg/dL,CRE:0.93 mg/dLとなった.
術後3日目,腹痛,悪心が悪化し,嘔吐を繰り返した.腸蠕動音は微弱,腹部全体が膨満し,鼓音を聴取することができた.また,術後ガスが出ていないこともわかった.X線とCTを撮影した結果,著明な腸管の拡張とニボー像が確認された.イレウス管を抜去し経口摂取を開始した後,悪心や腹部膨満の出現はなく定期的に排便が認められた.また,術後下肢に軽度浮腫が出現していたが,退院前には消失した.
社会的背景
家族で営む飲食店が忙しかったため病院を受診することができない状況だった.
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