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事例紹介
プロフィール
Cさん,75歳,男性,食道がん.
経過
60歳で退職し,これを機に20歳から1日20本程度喫煙していたが禁煙に成功した.禁煙後「味が美味しい」と,妻の手料理が楽しみだった.食事中につかえ感を自覚し,近院を受診し内視鏡検査を行った.検査の結果,食道がん(3病変)と診断された.診断時まで焼酎2合/日を飲酒していたが禁酒した.治療方針は,術前化学療法FP(フルオロウラシル+シスプラチン)2コース実施後,手術療法と決定した.化学療法の有害事象は,食欲不振・悪心CTCAE Grade 1が出現し,つかえ感もあり柔らかく味の濃い食事に変更し摂取量を確保した.
2コース後,「少し食欲は落ちたが家だと食欲が出る.前回よりも食べやすい」と,PreALB:27 g/dL,ALB:4 g/dL,食事量70%以上摂取でき体重が1 kg増加した.術前オリエンテーションが開始し,歯科受診で口腔内乾燥はあるが口内炎・う歯はなく歯石除去した.部分義歯を使用し咀しゃくは良好.呼吸リハビリを開始し,術前5日前から栄養補助食品を摂取するが下痢症状もなく継続摂取した.手術は,胸腔鏡下食道切除術,腹腔鏡補助下胃管作成,後縦隔胃管挙上,頸部吻合,空腸瘻造設術を行った.
術後1日目,嗄声がみられ左反回神経麻痺を認めた.口腔内乾燥,痰の粘稠度が強く,歯磨き・呼吸リハビリのケアを開始した.腸瘻から経管栄養剤投与,創部痛の疼痛コントロールし離床が開始した.術後4日目,頸部腫脹もなく頸部ドレーン抜去され,喀痰も容易になった.術後5日目,飲水テストでむせ込み,嚥下リハビリのケアが開始した.術後7日目,嚥下機能検査で飲み込み状況,咽頭残留状況を確認し,嚥下リードやとろみ食が開始した.食物や水分の咽頭残留がないことを確認し,椅子に座ってゆっくりよく噛んで,左頸部を回旋し飲み込む誤嚥予防し,嗄声に対し歌を歌う発声リハビリも併用し,肺炎症状・検査所見なく経過した.経口と経管栄養の併用で栄養素を補い(PreALB:14 g/dL),時折下痢がみられたが,「冷蔵庫から栄養剤を出してつないで,気がついたら終わっていた」ことから,経管栄養の投与速度を遅くし温度調整することで腹部症状も消失し排泄コントロールすることができた.腸瘻管理の手技を習得し,退院後も腸瘻を活用し,経管栄養剤と水分補給を経口から十分摂取し栄養量が確保できるまで併用となり,術後20日目に退院した.
身体所見と検査値
身長175 cm,体重64 kg,BMI 20,握力35 kg.術後1ヵ月目,体重55 kg,PreALB:20 g/dLに回復,握力30 kgを維持していた.
社会的背景
妻と二人暮らし.日課は庭いじりと散歩.
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