特集1 看護師だからこそできる“寄り添い”のかたち ~エキスパートの実践に学ぶ~
患者の苦しみに寄り添うこと ~スピリチュアルケア~
前滝 栄子
1
Eiko MAETAKI
1
1京都大学医学部附属病院/がん看護専門看護師
pp.304-306
発行日 2021年5月1日
Published Date 2021/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_304
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“寄り添い”のエッセンス
・患者の価値観や人生の物語に触れ,ありのままを受け取る ・患者の苦しみに気づき,苦しみに意識を向ける ・患者の苦しみから逃げず,ともにあり続ける
はじめに
看護師は,患者が全人的な存在,つまり,身体的,精神的,社会的,スピリチュアルな存在であることをふまえてケアしていくことが重要である.トータルペインの概念を提唱したSaundersは,「(死を意識するとき)多くの患者が自責の念あるいは罪の感情をもち,自分自身の存在に価値がなくなったと感じ,ときに深い苦悶のなかに陥っている.このことが,真にスピリチュアルペインとよぶべきものであり,それを対処するための助けを必要としている」1)と述べ,スピリチュアルケアの必要性について説明している.
がん終末期患者は,治療プロセスを辿りさまざまな症状の出現や病状の悪化などの体験を通し,より死を間近に意識するようになり,自分のこれまでもっていた自信や価値を失い,自らの存在に対して苦しみを感じるようになる.人生の締めくくりの貴重な時間をともに過ごさせていただく中で,このような苦しみを感じながらも,人生をいききることはどういうことかを学ばせてくださったKさんとのかかわりを振り返り,患者の苦しみに寄り添うということについて考えてみたい.
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