特集 がん患者に寄り添うコミュニケーション ~事例で学ぶ患者とのかかわりかた~
Ⅱ.コミュニケーションの実際 ~事例編~
混乱した患者の意思確認 本人の意思が不明なまま緩和ケア病棟へ転棟するところだった大腸がん患者
紺井 理和
1
1聖路加国際病院看護部/精神看護専門看護師
pp.150-153
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_150
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❁ 事例紹介
Lさん,40代前半,独身男性.
患者は下血を主訴に受診し,検査の結果,大腸がんと診断された.多発リンパ節転移を認めたため根治術ではなく抗がん薬による治療を開始.約1年後に腹膜播種による腹水貯留とそれに伴う急性腎不全状態となり,抗がん薬治療を中止.担当医から今後は緩和ケア病棟で症状コントロールをしながら過ごすことをすすめられ「受け入れるしかないが,もう少し考えてから最終判断させて欲しい」と言っていた.
その2日後に患者はせん妄状態となり,せん妄に対する治療が開始された.同日夕方に緩和ケア病棟のベッドが空いたとの連絡が入り,患者にその旨を伝えると「はい」と返答したが,せん妄でぼんやりとした意識状態だったため父親に相談して週明けに緩和ケア病棟へ転棟・転科することが決まった.
しかし,患者は今まで治療に関してすべて自分で意思決定してきており,最期の瞬間まで可能な限り自分でどうするか決めたいと言っていたため,せん妄からの回復を待ち患者に決めてもらいたいと病棟看護師たちは思った.
転棟当日ではあるが,せん妄が随分改善しているため,本当にこの状態で転棟してよいのか,少しでも理解・納得してもらってから転棟して欲しいと考えた看護師たちから相談されて,患者と話をすることにした.
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