特集 上部消化管がん看護のいま2020
術後患者の身体的変化と看護
稲城 陽子
1
Yoko INAKI
1
1がん研究会有明病院看護部/認定看護管理者/集中ケア認定看護師
pp.551-554
発行日 2020年7月1日
Published Date 2020/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_551
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
術後侵襲からの回復過程
術後侵襲からの回復過程としてムーア(Moore)の分類がある(図1).第Ⅰ相は「傷害期」,第Ⅱ相は「変換期」,第Ⅲ相は「筋力回復期」,第Ⅳ相は「脂肪蓄積期」である.第Ⅰ相,第Ⅱ相は,手術侵襲により受けたダメージを自律神経系,内分泌系,免疫系がバランスを取ろうとしている時期であり,さまざまな生体反応がみられる術後急性期である.この時期は不安定な時期であり,注意深く観察を続け術後合併症予防ケアが大切である.上部消化管術後の患者は術後合併症がなく経過した場合,術後2週間~1ヵ月にあたる第Ⅲ相の時期に退院となる患者が多い.退院時の患者は回復過程の途中であることを念頭に入れ退院指導を行う必要がある.退院後すぐに手術前と同じ食生活に戻れるわけではないので,第Ⅲ相の「筋力回復期」や第Ⅳ相の「脂肪蓄積期」の回復過程に影響を与える可能性は大きいことをふまえ,退院後の外来ではフォローしていくことが大切である.
© Nankodo Co., Ltd., 2020