今月の主題 細胞膜
検査と疾患—その動きと考え方・90
貧血と赤血球膜異常
八幡 義人
1
Yoshihito YAWATA
1
1川崎医科大学内科学教室
pp.670-677
発行日 1984年6月15日
Published Date 1984/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912217
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はじめに
貧血と赤血球膜異常については,①赤血球膜に主たる病因があって,その結果として貧血(この場合には溶血性貧血であるが)を生ずる場合と,②貧血が何らかの原因で生じ,その結果として赤血球膜異常を伴う場合とが考えられる.
このうち,第一の「赤血球膜自体の異常が主因である場合」に該当する疾患群は,表1に掲げておいた.赤血球膜蛋白異常症や,赤血球膜脂質異常症がこの群に該当する.後者の膜脂質異常症の中には,実際には血漿脂質異常が主因であるが続発性に赤血球膜脂質に著しい異常を惹起するために,あえてこの群に入れた疾患もある.例えば,遺伝性疾患としては,β-リポ蛋白欠乏症,lecithin:cholesterol acyl transferase(LCAT)欠乏症,α-リポ蛋白欠乏症などがそれであり,後天性の病因としては,肝疾患による血漿脂質異常症に伴う赤血球膜脂質代謝障害などがこれに該当する疾患群で,具体的には,標的赤血球症,spurcell anemiaなどである.また免疫学的機序もたいせつである.自己免疫性溶血性貧血(autoimmunehemolytic anemia:AIHA,特に温式)がそれである.ある種の薬剤(例えばα-メチルDOPAなど)も,免疫学的機序を介して赤血球溶血を生ずる.冷式AIHAの場合には,溶血は重症のことが多いが,これは補体(特にalternate pathway)の関与が大きい.
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