臨床検査の盲点
貧血の発見に赤血球算定は適当な精度でない
斎藤 正行
1
1東大
pp.220
発行日 1964年5月10日
Published Date 1964/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200272
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今日の診療において臨床検査の比重はきわめて大きく,最新式の大病院では1つの階が,また全職員の1割がこれに当てられている。また各地に医師会検査センターがはなばなしく開所しつつある。ところがこういう中央集中的検査方式で,一番最初に問題を提供するのは血液検査室のようである。なるほど患者を受持って寸暇をさいて血算やヘモグラムを見た昔の苦労を思うとそれを他人が一段と正確,迅速にやってくれるのであるから全くありがたい。自分でやるのなら貧血や白血球異常はなさそうだと主観的に決めたケースも他人がやってくれるのなら念のためにということでヘモグラムまで印をつけてしまう。しかしこういう方式で多くの見逃されていた疾患が浮かび上って来ることを考えるとこんな幸福はない。ところが依頼される側にとって見れば大変なことで,国電のラッシュのように短時間に検査は集中する。したがってデータは遅れがちとなりそこで依頼者はどのケースも「至急」と書くことになる。外来において患者を多少待たすだけで正確な検査データで適切,有効な診断と治療を行なうことは医師としての当然の心構えと思われるがこれを可能とするためには検査に対してももっと近代医療水準にふさわしい適切な考慮での依頼がなされてよいような気がする。
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