投稿 研究報告
地域で生活する胃全摘体験者の経験の意味とプロセス
伊藤 由里子
Yuriko ITO
キーワード:
胃がん体験者
,
胃全摘術
Keyword:
胃がん体験者
,
胃全摘術
pp.413-423
発行日 2019年5月1日
Published Date 2019/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango24_413
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
本研究は,地域で生活する胃全摘体験者の経験とその意味,プロセスを明らかにし,看護援助の示唆を得ることを目的とした質的記述研究である.半構成的面接法にてデータ収集し,グラウンデッド・セオリー法の継続比較法(Strauss A, Corbin J, 2004)を用いて分析を行った.研究協力者は胃全摘術を受け,手術から約1年が経過し,研究参加への同意が得られた胃がん体験者23名であった.高知女子大学看護研究倫理審査委員会と協力施設の倫理審査委員会の承認を得た.
分析の結果,135の概念,39のサブカテゴリー,胃全摘体験者の経験の意味とプロセスを説明しうる7つの【カテゴリー】を見出した.それらは,【健康や生活全体につながる胃の喪失】【胃のない身体で食べる鍛錬】【養生で会得する経験知】【養生を通して知る自分】【胃のない身体で生きる覚悟】【養生の経験を糧として開く自分の道】【受けとめと対処との連鎖】だった.
7つのカテゴリーは,地域で生活する胃全摘体験者が見出した胃を喪うことの意味であり,健康回復のため自ら行っている行動であり,自分自身や周囲の人々,環境との相互作用を通し身につけた力であり,成し遂げた変化と考えられた.本結果は,彼らの主体的な行動を活かした看護援助を考え発展させること,多くの胃全摘体験者に術後の見通しを提供することに貢献できると考える.
© Nankodo Co., Ltd., 2019