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2018年に第3期がん対策推進基本計画が公表され,これまでよりも高齢がん患者や,壮年期,AYA世代,小児がんなど,まさに世代に合った専門性の高い医療提供と患者支援が期待されている.
一般病院に勤務していると,高齢がん患者,認知症患者の増加が多く,がんと認知症を併せもつ方々への看護を考えさせられることも多い.2025年問題がどんどんと迫ってきているのを感じる.
一方で,AYA世代のがん患者は,抗がん治療の経済的負担が大きくなるばかりではなく,治療のための時間の捻出方法や治療中の過ごしかたに悩む.そして,これまでの交友関係,仕事などのライフスタイルが大きく変化する.さらに,両親やきょうだいとの関係性の再構築,自身の病気を考えたときの将来への不安との戦いも,深刻な状況である.こういったAYA世代の患者と看護師の自分が同年代の場合も多くあり,単なる病気への支援をする存在だけではなく,ともに生きかたを支え合う存在である場合もありうる.同世代だからこそ,AYA世代のがん患者の苦悩に対して,無力感や喪失感,時には激しい感情も体験していることがある.自分たちのかかわりや言動がこれでいいのだろうかと振り返り,悩みながら,また,彼らのことを心から尊敬しながら医療を提供していることも多い.
病院に勤務して,20年以上経ったいま,最初は病態や看護技術を習得するのに必死に過ごした.徐々に,がん患者や家族の人生に触れ,話を聞いたり,悩みを聴いたり,一緒に言葉を失い落ち込んだり,笑ったり,また,涙を流しながら頼ってくれたり,喜んでくれたり,いろいろな感情にあふれる仕事をしていることに気づかされた.実に医療はヒューマンドラマの場として数えきれない体験が存在している.時に,医療倫理,価値観の違い,多職種との連携,モヤモヤすることなどいろいろと葛藤することもあるだろう.しかし,がん患者や家族から日々学ばせていただき,成長する機会に常に接していることを幸せに感じることもあるだろう.
自身の看護師人生を考えたとき,過去から今そして未来につながる仕事に人生の深みと喜びを感じることもあると思う.本特集は,看護師としての自分自身と仲間の看護師のいる環境をいま一度認識し直し,臨床現場で働ける幸せを感じられる内容になるよう編集した.読者にとって自分自身を整え,さらなるキャリア形成の一助となれば幸いである.
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