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大腸癌患者の約50%が経過中に肝転移を発症する.治癒と長期生存の可能性がある唯一の治療法が外科的切除であるが,5年生存率は約40%,10年生存率は約25%程度にとどまっており,肝切除後の残肝再発と肺再発の制御が必要である.現在のoxaliplatin含有補助化学療法レジメン(FOLFOXまたはCAPOX)の推奨は,肝切除周術期のFOLFOXが全生存期間(OS)に影響しないものの,無増悪生存期間(PFS)の延長に効果がある可能性を示したEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)40983試験の結果の外挿に基づいている.大腸癌肝転移切除後の補助化学療法として,mFOLFOX6を投与される患者と,手術のみの患者を比較したJCOG0603試験の結果,無病生存期間(DFS)はmFOLFOX6を投与した患者で改善したものの,OSの改善は認められなかった.また,FOLFOXによるgrade 3以上の好中球減少症が50%,四肢の知覚麻痺が10%,アナフィラキシーショックが4%の症例で生じ,そして術後補助化学療法群1例で関連死亡が認められた.
癌の治療目標は,生存期間を延長させるか生活の質(QOL)を改善させるかである.OSの延長とQOLの改善のどちらも満たせない可能性がある術後補助化学療法としてのmFOLFOX6は,大腸癌肝転移切除後の患者においては有益ではないとの考えが現時点での結論である.大腸癌肝転移切除例に対する補助療法の至適投与法は確立しておらず,肝切除周術期の補助化学療法を正当化するエビデンスは依然としてないのが現状である.
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