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は じ め に
脊柱後縦靱帯骨化(OPLL)は,後縦靱帯の異所性骨化により脊柱管狭窄と脊髄症状をきたす難治性疾患である.OPLLには遺伝要因が関与することがこれまでの研究で示されているが1,2),単一遺伝子変異で説明される疾患ではなく,複数の遺伝因子に加え,肥満・代謝異常・力学的負荷・加齢などの環境因子が複合的に作用する多因子遺伝病と考えられている.ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study:GWAS)とは,ヒトゲノム中に存在する多数の一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)を網羅的に解析し,疾患との関連を統計学的に明らかにする手法であり,多因子遺伝病の研究に特に有用である.2014年には日本人を対象とした初のOPLL GWASが実施され,疾患感受性遺伝子R-spondin2(RSPO2)を含む6つの疾患感受性領域が同定された3).しかし,これらの領域だけでは疾患全体の遺伝率の一部しか説明できず,さらなる感受性領域の探索が求められていた.
近年,内科領域を中心として,大規模なコホートを対象としたGWASが急速に進展し,生活習慣病を中心に数十~数百の疾患関連遺伝子が同定されている4~6).これらの成果は,疾患の病態の理解のみならず,遺伝的リスクを定量化するポリジェニックリスクスコア(polygenic risk score:PRS)などを活用した予測医学や個別化医療の発展にも寄与している.
このような背景から,OPLLにおいてもさらなる大規模GWASにより病因を遺伝学的に明らかにすることが求められていた.そこでわれわれは,OPLLを対象に世界最大規模のGWASメタ解析を実施し,その遺伝的背景を包括的に解析した7).さらに,このGWAS結果を基盤に,ほかの形質との遺伝的相関や因果関係を統計遺伝学的手法で検証し,OPLLの病態理解と臨床応用への橋渡しをめざした7).
本稿では,日本人を対象とした最新の大規模GWASメタ解析の結果を報告するとともに,同解析結果を基盤として実施した遺伝統計解析を通じて,肥満・糖尿病・骨密度などの臨床的形質とOPLLとの関連および因果関係を検証した結果を示し,臨床応用に向けた新たな知見を提示する.

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