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は じ め に
後縦靱帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament:OPLL)は,椎間板の背側で脊椎椎体の後縁を連結する後縦靱帯が骨化,肥厚することにより脊椎管の前方から狭窄をきたし,脊髄または神経根の圧迫障害をきたす疾患である.部位は頚椎が最多であるが,胸椎や腰椎にも生じうる.頚椎OPLLは,男女比約2:1で男性に多く,40歳以上の中高年に好発する.逆に胸椎OPLLは1:2で女性に多いことが知られている.日本では頚椎疾患の外来患者のうち1.9~4.3%で単純X線像上後縦靱帯骨化を認めたという報告があり1),諸外国の報告(中国人0.2~1.8%,米国人0.12%,ドイツ人0.1%,イタリア人1.8%,台湾人3.0%)に比べると日本人に多い疾患と考えられる.また,家系調査により高率に多発家系が存在することがわかり,本症の成因に遺伝的背景があることが明らかとなっている2).
頚椎にOPLLが存在する場合,半数近くの症例で胸腰椎にもOPLLが存在する.またOPLL患者では,前縦靱帯骨化を中心として広汎に脊柱靱帯骨化をきたすびまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH)を高頻度に合併することも知られており,また棘上靱帯や黄色靱帯の骨化の合併も多いことから,脊柱靱帯骨化の一部分症としてとらえる考えもある.骨化が起こる要因として,全身的骨化素因,局所の力学的要因,炎症,ホルモン異常,カルシウム代謝異常,糖尿病,慢性外傷,椎間板脱出,全身的退行変性などが報告されている.
OPLLが存在しても必ずしも有症状であるわけではなく,OPLLによる神経圧迫により症状を呈する患者はむしろごく一部である.しかしいったん神経症状が発症すると進行性であることが多く,適切な検査,診断,治療が必要となってくる.実際の発症には脊椎の動きが加わった動的要素の関与も大きい.OPLLは黄色靱帯骨化症とともに厚生労働省の指定する「指定難病」になっており,現在,約35,000人が登録されている.
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