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は じ め に
小児大腿骨骨幹部骨折(図1)は小児骨折全体の1.6%と報告されており,女児よりも男児に発生する危険性が高い1).小児大腿骨骨幹部骨折の主な原因は年齢層によってさまざまである.年少児では転倒や転落などの低エネルギー外傷が多いのに対して,より年長児では交通事故などの高エネルギー外傷やスポーツ外傷などの頻度が増加する.
一方で,1歳未満の乳児では最大60%が非偶発性(non-accidental injury:NAI)の児童虐待もしくはその疑いであったと報告されており2),歩行年齢未満の小児ではNAIを疑って詳細な病歴聴取,身体所見の診察,骨折の特徴および状況の調査を徹底的に行う必要がある.米国整形外科学会(AAOS)のガイドラインでは,36ヵ月までの小児大腿骨骨幹部骨折は児童虐待の評価が必要であるという強い推奨がある3).
日本国内では,虐待が疑われる場合には,児童福祉法25条および児童虐待の防止等に関する法律6条によって,「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は,速やかに,これを市町村,都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村,都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」と定められており,病院や医師には早期発見の努力義務が課されている.可能な限り早期に多職種での連携によって対処する必要があり,虐待から避難させなくてはならない.
また,4歳以下に生じる本骨折の12.5%は病的骨折であり,その原疾患は脳性麻痺,骨形成不全,骨肉腫および線維異形成症などがあげられる.本骨折の治療に伴う長期の運動能力の低下と休学は,子どもだけでなく家族にとっても,身体的,社会的,精神的に不利な結果をもたらす可能性があり,動けない期間を短縮し休学期間を最短にする治療が望ましい.
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