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は じ め に
超高齢社会の到来に伴い,大腿骨人工骨頭置換術や人工股関節置換術を受ける患者数は増加している.さらに,これらの手術を受けた患者も高齢化することにより結果として,大腿骨ステム周囲骨折も増加している1).
大腿骨ステム周囲骨折は,すでに骨内に設置されているインプラントのために骨接合インプラントの設置が困難であるうえ,骨同士の接触面積も少ないため骨癒合も得られにくく,早期離床・早期全荷重歩行を開始すべき高齢者においてしばしば治療に難渋する.しかしそれにもかかわらず,大腿骨ステム周囲骨折についての100例以上のまとまった報告はほとんどなく,どのようなタイプの骨折にどのように治療すべきかはいまだ明確ではない.
治療方針決定のための大腿骨ステム周囲骨折の分類としてはVancouver分類2)やBaba分類3)がよく用いられているが,いずれの分類でもすでに骨内に設置されているインプラントが弛んでいれば再置換,弛んでいなければ骨接合という方針が原則となっているため,最終的には術中に脱臼させたうえで弛んでいるか否かを判定する必要が生じる.そのようなintraoperative stability testを行うとすれば,手術に際してはすべての器械を準備する必要があり,また,外傷外科医だけでなく人工関節外科医も必要となるなど,早期離床・早期全荷重歩行を開始すべき高齢者において治療が遅くなり,しっかりとした治療を行ったにもかかわらず結局,歩行ができない程度の日常生活動作(activities of daily living:ADL)レベルに落ちてしまう可能性が高くなる.
大腿骨近位部骨折においても上記のように治療が遅れることによるADLの悪化が生命予後の悪化につながることが指摘され,緊急整復固定加算および緊急挿入加算の制度が整えられ,骨折後48時間以内の手術とその後の早期離床・早期全荷重歩行訓練が推奨されている.今後,大腿骨ステム周囲骨折の増加がより顕著になってきた際に,できるだけ早く高齢者を離床させるためには,どの整形外科医が診たとしても術中の弛み判定をせずに術前画像のみで治療方針の決定ができる仕組みが,必要とされている.
そこでわれわれは,どのタイプの大腿骨ステム周囲骨折にどのような治療法が行われているかを100例以上の症例で調査し,その結果から,術中の弛み判定はせず,術前画像のみの情報から,ステム周囲骨折に対して骨接合術を行うか,ステム再置換術を行うかの治療方針決定を行う方法を考案したので報告する.
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