Japanese
English
小児整形外科up-to-date Ⅰ.総論
1.検診
運動器検診による運動器機能評価と今後の展望
Evaluation of musculoskeletal function by musculoskeletal screening and future perspectives
木村 美緒
1
,
鎌田 浩史
1,2
,
都丸 洋平
3
,
塚越 祐太
2
,
中川 将吾
4
,
山崎 正志
1,2
M. Kimura
1
,
H. Kamada
1,2
,
Y. Tomaru
3
,
Y. Tsukagosh
2
,
S. Nakagawa
4
,
M. Yamazaki
1,2
1筑波大学整形外科
2つくばスポーツ医学健康科学センター
3千葉こどもとおとなの整形外科
4つくば公園前ファミリークリニック
1Dept. of Orthop. Surg., University of Tsukuba, Tsukuba
キーワード:
musculoskeletal screening
,
child
,
locomotive organ
,
growth velocity curve
Keyword:
musculoskeletal screening
,
child
,
locomotive organ
,
growth velocity curve
pp.2-5
発行日 2024年4月25日
Published Date 2024/4/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei85_2
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は じ め に
科学の発達により世の中は便利になった.人々の生活を豊かにする一方,便利すぎると弊害も出てくる.生活習慣病はその一つではないだろうか.ゲーテの言葉を借りると,「われわれの本性は怠惰へ傾いている」に関連するのだろうか.
当然,大人に限ったことではなく,子どもを取り巻く環境も刻々と変化し,それに伴い子どもが運動する機会も変化してきた.メディアの発達や交通手段の発達,学校以外の時間の多様性,通学状況の変化は子どもの運動時間を変化させ,運動不足の子どもと運動過多の子どもの二極化が起きている.この運動時間の二極化は,怪我をしやすい,疲れやすい,肩こりや腰痛のある子どもの増加を招くとされている.過去20~30年間で子どもの骨折発生率は2~3倍に増加している1).さらにスポーツ庁の調査において,体力テストの結果は1985年ごろをピークに下降し,上昇傾向はみられるものの同水準までは回復せず2),近年は新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で活動制限が強いられたこともあり,子どもの体力は低下の一途をたどっている3).
体力が低下すると,一般的に健康上の問題や怪我の増加につながると認識されている.肥満傾向の子どもの割合は増加しており,将来の生活習慣病につながるおそれがあることや,体力の低下が豊かな人間性や自ら学び考えるといった「生きる力」を身につけるうえで悪影響を及ぼし,創造性や人間性豊かな人材育成を妨げるとの指摘がある4).そのため,子どもの運動器を守る取り組みは急務とされている.
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