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は じ め に
Mymobility(Zimmer Biomet社)は術前および術後の患者教育を,医療者側が設定した内容と期間で患者に提供できるスマートフォン(スマホ)アプリケーション(アプリ)で,わが国には2020年に導入された.患者に提供する情報は,主に教育タスク(疾患の知識,術前準備,合併症予防,術後の仕事や運動)とエクササイズ動画で,それぞれ術前と術後で複数個用意し,設定した日ごとに自動で送信することができる(図1).教育タスクとエクササイズ動画は病院ごとにカスタマイズが可能であり,独自のプログラムを作成できる.また,各患者の教育タスクおよびエクササイズの達成度は,医療者側も常に確認が行える(図2).医療者側で設定した日にvisual analogue scale(VAS)や日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ),Oxford Hip Score,Hip Disability and Osteoarthritis Outcome Score(HOOS)といった患者立脚型スコアも収集が可能である.メッセージ機能は双方向で文字と写真を送信することができるため,患者からの質問に対し,医療従事者が返信を行うことができる(図3).
人工股関節全置換術(THA)に関して,術後1~2日での退院が一般的となっている米国では,退院後の理学療法士からの指導に要する費用や,緊急の外来受診に関する費用をおさえることも課題となっており,理学療法士のかわりにMymobilityを活用することで,理学療法や予定時間外の受診にかかる費用を軽減でき,感染症や脱臼といった術後合併症や術後成績に関しても従来どおりの理学療法と比較して非劣勢であったとの報告も散見される1,2).また,世界的に大流行している新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で,通院回数の低減や,非対面での理学療法を希望する患者もいることを考慮すると,本アプリのように非対面での理学療法の施行や問題が生じたときにオンライン診療に近い状態でメッセージ機能を活用できることは有効と考える.
当センターは開院当初より早期退院を目標に掲げ,疼痛や嘔気・嘔吐対策,早期離床を励行することで,現在は術後3~5日での退院を標準としている.初診時と術前検査時に理学療法士からエクササイズの指導を受け,入院中も理学療法士の指導のもとで連日のリハビリテーションを行うが,入院期間が短いことで,退院後のリハビリテーションに不安を感じるという声も多く聞かれた.退院後も理学療法士の指導のもとでのリハビリテーション継続が必要と判断した患者に関しては,定期的なリハビリテーション通院もしくはリハビリテーション専門病院への転院をすすめるが,それ以外の標準の経過をたどる患者に対しては,自宅でのリハビリテーション体操を指導し,自己で行ってもらっている.
本アプリを活用することで,自宅でのリハビリテーションを安心して行え,不安や疑問点が生じた際も教育コンテンツの確認やメッセージ機能を利用することで解決できると期待して本研究において導入を行った.本研究の目的は当院でのMymobility導入による効果を検討することである.
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