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は じ め に
変形性股関節症,関節リウマチによる末期股関節障害に対する手術法として,人工股関節全置換術(THA)の有効性および安全性がこれまで数多くの研究論文によって報告され,長期の安定した臨床成績についても報告されている1~6).さらに,その手術件数は国内でも年間10%前後の増加を示しており7),今後もいっそう増加することが予測される.
THAの長期耐久性に影響を及ぼす術後合併症として,非感染性骨溶解(オステオライシス),感染,脱臼などがあげられる.一方,術後早期の合併症であるステム沈下や骨折,ステムの初期,そして長期にわたる安定性と大腿骨骨質の経年変化,骨の廃用性萎縮の出現も臨床上のいまだ解決されない問題点として存在している1~6,8~11).現在,セメントレスステムが世界的に広く使用されているが,どのようなデザインコンセプトのステムが,挿入された大腿骨の経年的,長期的な骨密度,骨質の変化に対して最良であるかについては,いまだ一定の見解が得られていない12).
そのなかで,ハイドロキシアパタイト(HA)が全周性に表面加工されたステム(fully HA coating stem)は,海外では30年近く前から臨床応用され,良好な臨床成績が報告されている13~16).わが国でも,2012年からHAがステムの全周性に表面に加工されたCORAILステム(DePuy Synthes社,Raynham)が臨床使用されている.さらにPOLARSTEM(POLARステム:Smith & Nephew社,Watford)が,2016年12月に新たに承認され,2017年3月から臨床の場面で使用され始めた.そして,2020年度中にはAvenir Complete Hip System(Avenir Completeステム:Zimmer Biomet社,Warsaw)が一般に広く導入される予定である(2020年4月10日投稿,2020年7月6日受理時).
しかし,同じようにHAが全周性に表面加工処理されたステムであっても,デザインコンセプト,手術器具であるブローチの形状,ステム形状(断面形状,テーパー形状,角度,ステム長など),表面加工処理,HA層の厚みなどが異なり,その結果(有用性と安全性)を一様に論ずることはできない.
本研究の目的は,POLARステムと新たに導入されたAvenir Completeステムの各ブローチの表面形状を比較・検討し,最終掘削処理された大腿骨髄腔内を観察し,比較することである.
© Nankodo Co., Ltd., 2021