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は じ め に
人工股関節全置換術(THA)後鎮痛法としてオピオイドを含んだ経静脈的自己調節鎮痛法(iv-PCA)や硬膜外麻酔,脊椎麻酔,神経ブロック,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),アセトアミノフェン(APAP)が使用される1).近年,疼痛伝達経路の各ヵ所で作用する鎮痛薬を組み合わせて使用することで,鎮痛効果の増大や副作用を軽減させる多様性鎮痛が広がってきている2).当グループではオピオイドを使用したiv-PCAが広く使用されてきた.オピオイドを使用したiv-PCAは鎮痛効果に優れる反面,副作用である嘔気を訴える例が少なくない3~5).われわれも嘔気・嘔吐により経静脈患者管理鎮痛が継続できない例をしばしば経験しており,本鎮痛法の弱点の一つと考えていた.
一方,APAPは嘔気・嘔吐が少なく比較的安全に使用できる薬剤である6,7).2014年にわが国でもAPAP 1,000mg点滴製剤が発売となり,その有用性が報告されている8).THA後疼痛管理に併用することで麻薬使用量を減少させるとの報告も散見される9).
THA後の疼痛は患者にとっても不安な要素の一つであり,また術後疼痛が少なければ早期リハビリテーションを有効に行うことができ,それにより歩行能力の早期回復や深部静脈血栓症の予防,入院期間の短縮といったさまざまな利点が期待できる2).同様に嘔気・嘔吐も経口摂取の低下に伴った水分や蛋白質の摂取不足や術後早期リハビリテーションの妨げとなり,患者の満足度の低下や不利益を起こしている可能性がある.
当グループで行っているTHAは大部分が筋腱を温存した最小侵襲手技での仰臥位前外側アプローチで施行されているため,従来のTHAよりも侵襲が少なく疼痛も軽度であると考えられる10~12).そのためAPAPのみでも十分な鎮痛効果が得られ,かつオピオイドと比較して嘔気・嘔吐が少ない術後疼痛管理が可能ではないかと推測した.
本研究の目的はTHA後の疼痛管理において経静脈患者管理鎮痛とAPAP点滴静注を比較し,除痛効果および有害事象の比較を行うことである.
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