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は じ め に
超高齢社会はわが国で現実の問題となっており,骨粗鬆症を背景とした高齢者の脆弱性骨折・骨折連鎖を予防し,健康寿命の延伸と,介護を担当する世代の負担軽減を図ることは社会全体の喫緊の課題である.厚生労働省もこの解決を後押しするために2022年の診療報酬改定で,大腿骨近位部骨折を対象に二次性骨折予防継続管理料を新設したが,大腿骨近位部骨折や脊椎骨折は,骨折連鎖の流れのなかでは末期ともいえる骨折で,その時点から二次性骨折の予防を企てても効果は限定的である.橈骨遠位端骨折(distal radius fracture:DRF)は閉経後女性が最初に骨折する部位としてもっとも頻度が高いと報告されており1),受傷後も移動能力には大きな影響がないため,手術後も通院による治療が継続可能である.そのため本骨折を受傷・治療した時点で骨粗鬆症と診断し適切に介入することにより,数年から10数年後に受傷するかもしれない大腿骨近位部骨折や脊椎骨折を予防できる可能性があると考えられる.
しかしながら単に骨粗鬆症の治療の必要性を声高に叫ぶだけでは,治療率や治療継続率は上がらない.近年注目されてきている骨粗鬆症リエゾンサービス(osteoporosis liaison service:OLS),骨折リエゾンサービス(fracture liaison service:FLS)は,マネジャーが中心となり,多職種・地域の医療機関で協同して骨粗鬆症診療を実践することで,患者の骨粗鬆症への理解度,骨密度検査率・治療開始率を上げ,治療継続率を維持し,脆弱性骨折を予防する試みであり,骨折の治療費や骨折に伴う介護の費用を低減させることが知られている2).FLSは骨折受傷後の二次骨折予防を中心とするのに対し,OLSはまだ骨折を起こしていない骨粗鬆症患者の一次骨折予防も含むため,対象とする患者群が広い点が両者の違いである.
当院では,DRFに対して手術を施行した中高齢患者を対象としたFLSを立ち上げ,初期段階で骨密度検査率・骨粗鬆症治療開始率が改善したので,その取り組みを紹介する.
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