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は じ め に
厚生労働省の人口動態統計によると,癌は1981年以降から現在まで日本人の死因の第1位であり,現代の日本では2人に1人が癌に罹患し,3人に1人が癌で死亡している.一方で,画像診断・遺伝子学的診断の発達や,チロシンキナーゼ阻害薬あるいは免疫チェックポイント阻害薬など新しい治療法の発達で,癌を取り巻く治療環境も大きくかわってきている.
癌患者数の増加と生存率向上に伴い,骨転移を発症する患者数も増加している.骨転移は生命予後に直接影響することは少ないが,疼痛や知覚障害,運動障害を起こすことにより,癌患者の日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)の低下を招き,癌治療の継続,生活や就労,終末期・在宅治療にまで大きく影響する.骨転移により発生する骨折・麻痺・高カルシウム血症や,骨転移に対する手術的治療や放射線治療を骨関連事象(skeletal-related events:SRE)と呼ぶ.しかし,手術的治療や放射線治療は,骨折や麻痺を防ぐために必要なことも多い.本稿でのSREは,治療を除いた骨転移による骨折と麻痺をさすこととする.骨転移診療は,いかにSREの発生を防ぎ,癌患者のADL・QOLを維持・向上していくかが重要である1).
SREの発症を予防する取り組みの一つとして注目されているのが,骨転移カンファレンスであり,骨転移を有する患者に特化した症例検討会議である.骨転移カンファレンスでは,骨転移を有する患者について多くの職種や診療科が集まり,SREの発生の予防,治療方針,患者や家族の意向などを検討し,方向性を共有する.転移キャンサーボードと呼ばれることもあり,基本的には同じと考えてよい.カンファレンスは,本来症例検討会のイメージが強く,ボードは方針を決定する会議が本来の意味のようであるが,現在は同義として使われることが多い.キャンサーボードは,手術や放射線療法,化学療法に携わる専門的な知識や技能を有する医師やその他の専門医師および医療スタッフが参集し,癌患者の症状や状態,治療方針などを意見交換・共有・検討・確認などをするための会議をさす.このキャンサーボードの設置および定期的開催は,がん診療連携拠点病院の指定要件として定められているが,骨転移カンファレンスあるいは骨転移キャンサーボードを実施している施設はまだ多いとはいえない2).本稿では,骨転移カンファレンスの意義,開催様式について,当院における取り組みに触れながら述べる.
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