Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに:骨粗鬆症患者のビタミンD 充足状況
骨粗鬆症の治療目標は骨折抑制であるが,骨密度は,そのsurrogate markerの一つとして重要な因子である.実際,『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン』でも,椎体骨折,非椎体骨折,大腿骨近位部骨折の発生予防効果に加え,骨密度増加効果も治療推奨を定める際の重要なエビデンスとなっている1).
ビスホスホネート(BP)製剤は,骨密度増加効果および骨折発生抑制効果についてのエビデンスを有する骨粗鬆症治療薬であり,欧米では骨粗鬆症治療の第一選択薬となっている.しかし,実臨床におけるデータの蓄積から,BP製剤にもnon-responderが存在し,この集団はresponderに比べ大腿骨近位部骨折の発生リスクが高まることが示されている2).
当院専門外来を受診した原発性骨粗鬆症女性342名の約50%がビタミンD不足あるいは欠乏の状態にあった.このような状態にある前治療のない閉経後骨粗鬆症患者に対してBP製剤を単剤で治療すると,投与開始6ヵ月後の腰椎骨密度増加効果はビタミンD充足状況と相関する.ビタミンD不足・欠乏群でも3.3%の増加を認めるものの充足群では6.8%に達する(p<0.05)[図1].また,治療6ヵ月後に腰椎骨密度が低下するリスクが,ビタミンD充足群と比較して不足群では有意に高い[オッズ比8.5(95%信頼区間1.3~57.4)]3).以上より,BP製剤単剤で治療を行う際には,そのnon-responderを指標として,ビタミンD充足状況を反映する血清25-hydroxyvitaminD3[s25(OH)D]の把握は有用であることが示唆される.実際,2019年より骨粗鬆症に対してもs25(OH)Dの測定が保険収載された.
このように,本邦においては骨粗鬆症患者の多くがビタミンD不足状態であるという背景もあり,BP製剤と活性型ビタミンD製剤(aVD)との併用療法が普及している.しかし,BP製剤とaVDとの併用療法もnon-responderは存在する.しかし,aVDを用いた場合s25(OH)Dは変化しないため,ビタミンD不足や欠乏の改善の有無やBP製剤との併用による骨密度増加効果の指標とはならない4).そこでわれわれは,BP製剤とaVDとの併用療法における骨密度増加効果と関連する因子を検討した5).
© Nankodo Co., Ltd., 2020