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は じ め に
骨盤骨折に対する手術的治療は侵襲が大きく,合併症の頻度が高いため,転位の小さい骨盤骨折に対してはしばしば保存的治療が行われてきた.しかし,癒合不全による疼痛の残存や長期臥床によるADL低下が問題となり,後に手術による内固定を必要とする場合がある.骨盤骨折に対する透視下の経皮的スクリュー固定術は低侵襲で有用だが,骨盤周囲には神経血管が近接し,スクリューの挿入には細心の注意が必要である.骨盤輪骨折における従来のX線透視下での経皮的スクリュー固定術の報告は散見され1~4),スクリュー挿入の安全域が狭く,スクリュー設置不良は10~60%で,特に1~7%に神経障害を起こしうると報告されている.
一方,ハイブリッド手術室は,手術テーブルと据置き型X線透視装置が設置された手術室であり,主に脳神経外科や心臓血管外科などが外科的手術とカテーテル治療を同時にあるいは単独に,安全かつ迅速に行うために開発された.本邦では2006年に慈恵会医科大学が先駆けて導入し,2013年に経カテーテル的大動脈弁植込み術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)が保険収載されて以降,急速に設置が進んでいる5).Siemens Healthcare社のハイブリッド手術室は,2018年11月現在では全国でおおよそ120室に導入されており(図1),他社(フィリップス社,GE社,キヤノンメディカル社)を含めると200台を超えるハイブリッド手術室があると思われる.ハイブリッド手術室の据置き型X線透視装置は,最大撮影範囲(field of view:FOV)が約19インチ(48cm)と広く,高精細なフラットパネルディテクタにより歪みのない良質な透視画像が得られる.また,X線透過性の手術テーブルの位置を認識し,術中のリアルタイムCアームコーンビームCT(CアームCBCT)撮影が可能である.隣接するワークステーションでは,CアームCBCT画像(3D画像)とリアルタイムの透視画像(2D画像)を重ね合わせる機能を使用し,術中透視画像を確認しながらのデバイスのナビゲーションが可能である(2D/3Dナビゲーション)6~8).
2D/3Dナビゲーションの一つであるsyngo Needle Guidance(Siemens Healthcare社)は,3D画像データを用いた針生検用のアプリケーションで,体の深部にある病変に対して,体表からの直線ルートの軌跡を描出し,術中透視画像に重ね合わせることで透視下の針生検のナビゲーションができる9~11).放射線透視装置は手術テーブル位置を認識しているので,透視装置の角度を変えると3D骨モデル上の術前計画の軌跡が連動し,透視画像に追従したナビゲーションの軌跡が描出される.われわれは,このアプリケーションを用いて転位の小さい骨盤輪骨折,寛骨臼骨折に対して中空スクリュー(cannulated cancellous screw:CCS)のガイドワイヤの骨刺入点と終点を結ぶ軌跡を計画し,ハイブリッド手術室での経皮的スクリュー固定術の成績について検討した.
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