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は じ め に
寛骨臼骨折は,頻度こそ高くはないものの整形外科医にとってもっともチャレンジングな骨折の一つである.本骨折の治療結果は股関節機能に直接影響するため,成績不良が患者の社会生活に与えるインパクトは大きい.また近年では高齢者の受傷が増えており,その治療には難渋する.治療の目標は股関節の解剖学的再建であり,患者の生涯にわたる持続的に良好な機能の温存にある.一般的に,転位した本骨折には観血的整復内固定術(open reduction and internal fixation:ORIF)が選択され,関節面の解剖学的整復を行い外傷性関節症のリスクを最小限に抑えることを目標とする1).術後合併症はさまざまであるが,外傷性股関節症,大腿骨頭壊死,異所性骨化,関節拘縮などが問題になる.これらの合併症を生じた場合,社会生活における支障が大きくなれば人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)が唯一の解決策になる1).
寛骨臼骨折の初期治療失敗とその後のTHAの必要性に関連する危険因子を検討したシステマティックレビューにおいて,成績不良因子としては高齢,女性,後壁骨折,関節面陥没,大腿骨頭脱臼が指摘されている2).しかし,これらはわれわれ術者が関与できない因子である.われわれがコントロールできることは,受傷後早期(可能であれば3週間以内)に手術療法を行うこと,関節面の良好な整復位(理想は2mm以内)を獲得することである.本稿では長期にわたって経過観察している寛骨臼骨折の自験例を呈示し,長期成績に関する報告をまとめて考察した.なお股関節後方脱臼骨折に関しては本稿では触れず,次稿で報告する.

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