Japanese
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連載 卒後研修講座
問題症例から考える骨盤輪骨折の治療
Learning the treatment from problem cases of pelvic ring fracture
松村 福広
1
T. Matsumura
1
1自治医科大学救急医学講座
1Dept. of Emergency Medicine,Jichi Medical University, Shimotsuke
キーワード:
pelvic ring fracture
,
complication
,
internal fixation
Keyword:
pelvic ring fracture
,
complication
,
internal fixation
pp.63-73
発行日 2021年1月1日
Published Date 2021/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_63
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は じ め に
骨盤骨折の治療に難渋することは少なくない.高エネルギー損傷による場合は多発外傷を伴っている症例が多く,急性期の迅速かつ適切な治療方針の決定とその実行はむずかしい.急性期を乗り切った後に行う確定的治療においては,骨盤輪の複雑な骨形態と強靱な靱帯構造によって整復内固定は簡単ではなく,一般の整形外科医には馴染みが浅い手術アプローチも内固定術の難易度を上げている.外来での経過観察段階でも,本骨折による疼痛や神経障害の訴えが続けばその原因を検索し,対応可能な場合には対処することが望ましいが,これはさらに難易度が高い.近年では骨粗鬆症をベースとした脆弱性骨盤骨折に遭遇する機会が増えているが,診療に当たった医師にその認識がなければ診断は遅れ,適切な治療時期を逃すことになる.たとえ診断できたとしても,そのような患者は骨の脆弱性だけでなく高齢で内科合併症も多く,外科的治療には躊躇してしまう.高エネルギー損傷による骨盤骨折は減少傾向にあるかもしれないが,脆弱性骨盤骨折は増加傾向で1),一般の整形外科医が遭遇することもあるため正しい知識をもっておかなければならない.以上のように骨盤骨折の治療はむずかしい場合が多々あるが,本稿では筆者が経験してきた症例をもとに,初期対応および診断から手術治療における注意点を中心に解説する.また治療が順調にすすまなかった症例を呈示し,問題を生じさせないための注意事項などについても記載する.
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