Japanese
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しびれ・痛みに対する整形外科診療の進歩 Ⅰ.総 論
1.薬物療法
副作用による脱落低減を目的とした経口トラマドール製剤の少量漸増投与法
Slowing the titration rate of tramadol HCl from a lower dose reduces the incidence of discontinuation due to adverse events
福元 銀竜
1
G. Fukumoto
1
1松翠会森園病院整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Shousuikai Morizono Hospital, Satsumasendai
キーワード:
tramadol HCl
,
titration
,
lower dose
,
discontinuation
,
adverse events
Keyword:
tramadol HCl
,
titration
,
lower dose
,
discontinuation
,
adverse events
pp.8-11
発行日 2018年10月30日
Published Date 2018/10/30
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei74_8
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は じ め に
運動器疾患の慢性疼痛における薬物療法の中で,弱オピオイド製剤を投与することは整形外科診療の日常風景となりつつある.しかし,対象症例が主に中高齢者であり,他剤に比べ高い副作用発現率を呈する本剤には注意が必要である.特に眠気や嘔気・嘔吐,浮動性めまい,便秘などが発現しやすく,ADLに大きな障害をきたすため,せっかく鎮痛効果を得ていながら脱落する症例もめずらしくない.特にポリファーマシー症例では副作用が発現しやすく,さらなる慎重投与を要する.弱オピオイドの中でも,経口かつ長期処方が可能なトラマドール製剤(以下,本剤)は多用されており,実臨床ではきわめて多くの症例に副作用が生じていると思われる.当然ながら,的確な診断と適応決定のもと,本剤特有の副作用に関する説明も十全に行い投与することが大前提である.そのため,難治性疼痛と思われても,安易な薬物療法を選択するべきではない.まずは,生活習慣(不良姿勢や歩容)の改善指導やリハビリテーション,装具療法などの徹底した保存療法を実施すべきである.
本剤の主要対象は,高齢または合併症のために手術不可能な症例,手術拒否の症例,痛みのために実施困難な保存的治療を促進したい症例と思われる.嘔気・嘔吐,食欲低下,浮動性めまいなどが発現するため消化器内科や神経内科などを受診することも多い.整形外科医として副作用をいかに減少させられるか,脱落予防目的で筆者の行っている少量漸増投与法について述べたい.
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