診療controversy medical decision makingのために 全身型重症筋無力症に胸腺摘除術は有効か
有効ではない
槍沢 公明
1
1総合花巻病院 神経内科
キーワード:
萎縮
,
胸腺過形成
,
胸腺腫
,
胸腺腫瘍
,
胸腺摘出術
,
重症筋無力症
,
自己抗体
,
Cholinergic Receptors
,
T細胞
,
リンパ球活性化
,
治療成績
,
細胞発生
Keyword:
Atrophy
,
Autoantibodies
,
Lymphocyte Activation
,
Myasthenia Gravis
,
Receptors, Cholinergic
,
Thymectomy
,
Thymoma
,
Thymus Hyperplasia
,
Thymus Neoplasms
,
T-Lymphocytes
,
Treatment Outcome
pp.902-905
発行日 2011年5月1日
Published Date 2011/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2011189968
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重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)は主に骨格筋アセチルコリン受容体(AChR)に対する抗体を介する自己免疫疾患である。胸腺はMG発症に必要な病態の一部には関わっている場合が多いが、その関与の仕方と程度は、胸腺組織型、発症年齢、発症からの期間によって異なる。胸腺摘除により早期完全寛解を得る例はまれである。MGの完全寛解率は低く、胸腺摘除が完全寛解率を高めるというデータはない。とくに、近年、急増している高齢発症MG(late onset MG:LOMG)非胸腺腫例(MGの過半数を占める)では、胸腺摘除の有無にかかわらず完全寛解はほとんど得られない。筆者の主張は、胸腺摘除がMGに対しまったく無効ということではなく、有効例は限られるということである。少なくともLOMG非胸腺腫例に対し、胸腺摘除をfirst-lineの治療として患者に勧めてはならない。MGの胸腺異常は、若年発症MG(early onset MG:EOMG、MG全体の約30%)例の約半数にみられる過形成胸腺と、胸腺腫(thymoma)(MG全体の10~15%)である。LOMG非胸腺腫例の萎縮胸腺は正常対照例の萎縮胸腺と差はない。本稿ではEOMGの過形成胸腺、胸腺腫、LOMG非胸腺腫例の萎縮胸腺の3者について、MG病態との関連から胸腺摘除の意義について論じる。
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