発行日 2016年9月1日
Published Date 2016/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2016403003
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46歳女性。骨盤炎に罹患した際に施行したCTで上縦隔異常陰影を指摘、胸腺腫が疑われた。手術適応と判断したが、患者の希望で経過観察となった。4ヵ月後、急速に四肢筋力の低下、眼窩下垂などの症状が出現し、重症筋無力症(MG)合併胸腺腫に対する手術目的で入院となった。入院時、自力歩行は困難で、眼瞼下垂、嚥下困難、構音障害を認め、全身の筋力低下に加え球麻痺も合併しており、class IIBと判断した。一方、呼吸検査では高度な呼吸機能低下を認め、血液ガス検査では二酸化炭素の貯留が認められた。胸部造影CTを行ったところ、前縦隔左側には26×21mmの造影効果に乏しい軟部腫瘍影が確認された。胸骨正中切開で胸線全摘術を施行した結果、腫瘍は胸線左葉下極に位置しており、左縦隔胸膜との癒着は軽度で容易に剥離可能であり、心臓・縦隔・大血管への浸潤は認められなかった。病理組織所見は胸腺腫のtype B1で、リンパ節転移や周囲臓器浸潤はなく、正岡病期分類I期、WHO分類T1N0M0 I期と考えられた。術後はステロイドパルス療法、維持免疫療法、免疫吸着療法、免疫抑制薬の投与により術後41日目に人工呼吸器離脱に成功した。歩行訓練には長期間を要したが、術後117日目に自力歩行での退院となった。
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