臨床室
腰椎椎間板ヘルニアから生じた椎間板嚢腫の1例
谷口 健太
1
,
田中 優砂光
,
森 信太郎
,
水溜 正也
,
岡島 啓一郎
1自衛隊熊本病院 整形外科
キーワード:
MRI
,
脊椎疾患
,
椎間板
,
椎間板ヘルニア
,
内視鏡法
,
嚢胞
,
癒着
,
腰椎
,
下肢伸展挙上テスト
,
癒着剥離術
Keyword:
Tissue Adhesions
,
Cysts
,
Endoscopy
,
Intervertebral Disc
,
Intervertebral Disc Displacement
,
Magnetic Resonance Imaging
,
Lumbar Vertebrae
,
Spinal Diseases
pp.1351-1353
発行日 2015年12月1日
Published Date 2015/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2016086565
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症例は46歳男性で、腰痛、左下肢痛が出現し、整形外科を受診した。MRIでL2/L3高位左側に下垂する腰椎椎間板ヘルニアを認めた。保存的治療を行ったが症状が改善せず紹介受診となった。左腰臀部から下肢にかけ疼痛を訴えたが、筋力低下や知覚障害は認めなかった。軽度の残尿感を訴え、下肢伸展挙上テスト(SLRT)左が40°で陽性、JOAスコアは20点であった。腰椎単純X線像では明らかな異常所見はなかったが、MRIではL2/L3高位から左右に下垂する、T1強調画像低信号、T2強調画像等信号を呈する腫瘤性病変を認め、同病変は硬膜を圧排していた。2ヵ月後に再度MRIを施行し、病変のうち、左に下垂する部位はT1強調画像低信号、T2強調画像高信号を呈する腫瘤性病変に変化しており、硬膜との間および左右のヘルニア塊の間にはT2強調画像で低信号になる被膜を形成していた。また、右に下垂するヘルニアは同輝度のままであった。以上より、ヘルニアから変化した椎間板嚢腫と診断した。3ヵ月間、保存的治療を継続したが症状が改善しなかったため、内視鏡下腫瘤摘出術を施行した。腫瘤は周囲との癒着が強く、左L3神経根分岐部から全周性に慎重に剥離を進めると、操作中に腫瘤が破れ漿液性内容物が漏出したので、縮小した被膜を切除した。被膜を切除すると椎間板との交通が確認でき、これがヘルニア孔と考えられた。摘出した腫瘤被膜の病理組織像は線維性結合組織の増生を伴った嚢胞壁様の組織を含んでいたが椎間板組織はなかった。腰痛および下肢痛は改善し、術後3ヵ月の時点で症状の再発はなかった。
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